日本では確定申告は2月15日ごろからですが、アメリカでは1月末ぐらいから本格的に確定申告(Tax Return)が始まります。

確定申告 税金 還付金 税理士
確定申告 税金 還付金 税理士

 

確定申告は個人でも税理士に依頼するのが普通

アメリカではこの時期、ウォルマートなどの普通のスーパーの一角にも民間の会計士の会社がブースを構えて、確定申告のお手伝い(確定申告書に相当するForm 1040, U.S. Individual Income Tax Returnという書類の記入の手伝い)をしてくれます。もちろん有料ですが、アメリカでは脱税など経済犯でも実刑判決になることもあるので、読みにくい確定申告の書類をがんばって記入してIRS(アメリカ合衆国内国歳入庁 https://www.irs.gov/ 日本で言う国税庁)に郵送しなければなりません。(Form1040自体は2ページしかないのですが、住宅ローン控除などを利用する場合は別の用紙を添付する必要があります。)アメリカはこういう細かいペーパーワークが苦手と言うか、イライラするので嫌い!という人も多いですからね。

このとき、税金を追加で納付しなければいけないときは、小切手やマネーオーダー(郵便小為替のようなもの)を一緒に同封します。アメリカでは銀行口座を持っている人が60-70%くらいで、送金手数料も日本に比べてはるかに高いので、このような方法が一般的です。最近ではクレジットカードでの支払いも可能です。

確定申告書は電子申告・提出も可能

確定申告書の提出方法も、日本のe-taxのような電子申告を進めたいようで、「電子申告(e-file)なら3週間ほどで還付金が受け取れますよ!」とアピールしています。広いアメリカの郵便事情はひどいですからね。普通の封筒の送料は安いですが、1週間くらいはかかりますし、郵便物が届かないケースもそこそこありますから、油断はできません。

アメリカには会計士の資格はあるが、税理士の資格は無い

なお、アメリカにはCPA(公認会計士)の資格はありますが、税務だけを担当できる税理士という資格はありません。世界的にもどれくらいの国でこういうちょっと宙ぶらりん(会計監査はできないけど税務はできる)な資格はあるんでしょうね?日本では公認会計士の資格を取るのが難しすぎる、というのがありますけどね。

税理士・会計士も値引き合戦

 確定申告 税金 還付金 税理士
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自由の国アメリカでは会計士や税理士の手数料や決算料の値段のつけ方も自由。値引き合戦や宣伝方法も自由です。普通の家でも画像のようなダイレクトメールやチラシが届きます。「始めて当会計事務所をご利用くださる方には40%オフ!」なんて携帯電話の宣伝のようなイメージですね。

すべての所得がある人が確定申告する必要がある

実はアメリカにも源泉徴収の仕組みはあるのですが、年末調整の仕組みがありません。そのため、基本的にすべての収入・所得がある人は確定申告をする必要があります。外国人であっても企業などに雇われた場合や自営業者・個人事業主はSSN(社会保障番号:日本で言うマイナンバー)を取得して、確定申告をする義務があります。

そうすると、3億人近くがこの1月末くらいから確定申告期限の4月15日までにいっせいに確定申告書を国税庁に送付するわけですから、処理するほうの国税庁も大変ですよね。それでも通常、3月中旬から5月ごろまでには還付金があれば、ほとんどの場合、小切手で届きます。

しかし、特に今年はトランプ大統領の政府閉鎖の影響で、国税庁の職員は通常の20%しか勤務していなかったということなので、「政府閉鎖期間中に溜まってしまった法人や会計年度ベースで確定申告した人などの税務処理や還付金の手続きが終わるまでには数年かかるかも」と懸念されています。

源泉徴収があっても年末調整が無い

また、納税の方法も源泉徴収以外に、2週間ごとの小切手(ペイチェック)からは引き落とししないで、確定申告時にまとめて納税する方法を選ぶことも可能です。でも、アメリカでは国民の半分が貯金5万円以下。みんなお金があったら使ってしまうので、確定申告時期に真っ青になってしまいますから、この方法を選ぶ人は非常に少ないようです。

所得税は国税だけで地方税が無い

ちなみに、このIRSは合衆国連邦政府の所得税(income tax)・給与税(payroll tax)と個人事業主や企業の事業税・法人税(corporate income tax)を取り扱っています。逆に言うと日本のように地方自治体の地方税の課税基礎になるわけでもありませんから、個人情報が地方政府に行くことも無く、そもそも地方の所得税がありません。税収に占める所得税と給与税が占める割合は約80%ですが、いつまでアメリカの(もともとさほど充実していない)社会保障が維持できるかは不明です。2019年現在、若い移民がたくさん子供を生んでくれているので社会保障も維持できていますが、白人だけを見るとすでにアメリカの少子高齢化は始まっています。

逆に、消費税(sales tax)は各州と郡や市町村で独自に設定でき、「連邦(アメリカ全体で共通)の消費税」と言うのはありません。「人口を増やしたい州は、消費税を安く設定する」なんていうことが可能なわけです。ガソリン税など、特に州の税金に対する裁量権はとても大きいのです。

寄付金控除は充実

日本でも、「寄付の文化を根付かせよう」とふるさと納税制度が始まりましたが、結局、所得税を都市と地方で奪い合うだけになってしまいましたよね。なぜかというと寄付金控除・寄付金特別控除の適用される団体が増えていないからです。寄付金控除が適用されるのは、地方自治体以外では、「政治活動に関する寄附金のうち政党若しくは政治資金団体に対する寄附金」又は「個人が支出した認定NPO法人等若しくは公益社団法人等に対する寄附金」となっており、

特定公益増進法人として以下の法人が政令で定められている(所得税法施行令217条)

  • 独立行政法人1の2 地方独立行政法人であって、試験研究を行うこと又は病院若しくは介護老人保健施設の設置又は管理を主たる目的とするもの:自動車安全運転センター、日本司法支援センター、日本私立学校振興・共済事業団及び日本赤十字社
  • 公益社団法人及び公益財団法人
  • 学校法人で学校(学校教育法第1条 (定義)に規定する学校をいう。以下この号において同じ。)の設置若しくは学校及び専修学校(学校教育法第124条 (専修学校)に規定する専修学校で財務省令で定めるものをいう。)若しくは各種学校(学校教育法第134条第1項 (各種学校)に規定する各種学校で財務省令で定めるものをいう。以下この号において同じ。)の設置を主たる目的とするもの又は準学校法人で専修学校若しくは各種学校の設置を主たる目的とするもの
  • 社会福祉法人
  • 更生保護法人

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AF%84%E9%99%84%E9%87%91%E6%8E%A7%E9%99%A4より引用

と定義されています。日本赤十字以外はあまりなじみがないですよね?学校っていうのも、私立の学校は入学時に寄付金義務、見たいな感じだし、もともと学費が公立学校より高いので、それ以上寄付する気にならないですよね?

アメリカではいわゆる非営利のNPO法人や教会のような宗教法人なども、適正に手続きをすれば寄付金控除の対象になり、寄付を受ける側の団体も、年明けになると「昨年は寄付をいただきありがとうございました。当団体は寄付金控除の対象で、組織番号は******です」といった手紙を発送します。「控除対象だから来年も寄付よろしく!」という意味合いも強いですけどね。